「Besoin du jardin 庭はなぜ要るのか」
マ・カシェットは「私の隠れ家」という意味がしめすとおりフランス・オーベルニュの
山と牧場に囲まれた小さな町の一角でひっそりと営まれていた小さな民宿です。
築二百年という農家を改装した建物には灰色の猫が一匹と大きな美しい庭がありました。
杉の大木、蔦のトンネル、バラの繁み、朽ちたベンチ、ハーブを植えた畑、名も知らぬ花。
まるで植物たちの秩序と混沌の中に秘密が隠されているような、不思議な魅力をたたえた
この庭を私は夢遊病のように歩き回り、夢中で写真を撮り続けました。
2006年から宿を廃業してしまう2012年にかけて、私は幸いにもマ・カシェットを
4度訪ねることができました。
時間と季節の変遷は世界を変え庭の姿を変えていきます。
私が写した写真はこの庭の歴史のほんの一部の些細な瞬間にすぎませんが、
それでもその一瞬一瞬には魔法のような庭の引力が働いているように感じます。
pour Johan,Pierre et Fritz - Ma Cachette